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「epijenetics」 3

ある時、仙道さんと場末の居酒屋に飲みに行き、仙道さんが自分の過去を話してくれたことがあった。

話によると、仙道さんは、元は自動車の整備士だったらしい。

「あのころは楽しかったよ。

ただひたすら、オイル塗れになりながら、ポンコツの車をいじっていればよかったんだからね」

それと同時に、車の改良も試みる、研究者でもあった。

「主にエンジン部分をいじったよ。中古のフォードとかね。いじりがいはあったなぁ」

仙道さんが試作したエンジンは、かなり評判がよかった。

そしてその開発力に、いつの頃からか、軍が目を付け始めた。

ある時、陸軍の兵器の開発を担っている部署の責任者と名乗る男がやってきた。

「姿形は、ごく普通の初老の男だったよ。

ただ、気味が悪いほどスーツ姿が似合っていた。

あと、声のしゃがれ具合とか、今でも耳に残ってる。

彼は高額な棒給と引き換えに、軍に勤めてみないか、と誘ってきた」

―大陸や南方は、湿地や沼地が多い。そういったところでは、馬力のあるトラックが必要になる。その開発には、君のようなエンジンに強い人材が不可欠だ。それに、我々は今後、航空戦力の増強にも努めていく方針である。その際、最も障害になると予想されるのが、これもエンジンだ。我々には、君の力が必要だ―

責任者曰く、そういうことらしい。

「馬鹿馬鹿しかったね。

宮仕えなんかまっぴらごめんだったし、飛行機なんかいじったことないし、なによりも、整備士の仕事が好きだったんだ。

後が怖かったけれども、丁重にお引取り願ったよ」

男は特にしつこく迫ることはせず、素直に帰っていった。


その直後、大空襲がこの町を襲った。


「この町の被害は軽いものだったなんて言ってる奴らもいるけれど、とんでもない。

町の主な施設はあらかた吹っ飛ばされたし、今でも空き地は目立つ方じゃないか。

大したこと無いなんて言ってる奴らは、あの空襲を知らない奴らだ」

ここで仙道さんは言葉を切り、杯に残っていた酒を一気に煽った。

「突然だったよ。

警報もへったくれもなかった。

いきなり俺の家のすぐそばに爆弾が落ちてきたんだ。

その衝撃で、窓ガラスが粉々に砕けて、そして―」

手酌で酒をなみなみと注ぐと、それも一気に飲み干した。


「―妻へと突き刺さった。


その時の光景は忘れられないね。


僕はコタツに入って茶を飲んでいた。

妻は、窓の近くに置いていた火鉢に炭を足していた。

窓から覗く空は、いかにも寒そうに、厚く雲がたれこめていたよ。

こんな視界が悪い日には、爆撃機もこないだろう。

部屋の中は暖かい。

妻は何度も欠伸をしていた。

平和そのものだったよ。空だけは不気味だったけど。 


突然だった。


近くで爆音がした。

まさか、とは思ったよ。まさかこんな日に、って。

妻もそう思ったんだろうね。素っ頓狂な声を上げて、窓のほうを見たんだ。


同時に、ガラスが砕けた。


僕はとっさに身を伏せた。

強烈な爆音で、耳がいかれた。

しばらくのあいだ、伏せていた。

情けないことだけど、かなりもらした。

耳が元に戻るにつれ、だれかが叫ぶ声が聞こえた。悲鳴だった。

僕は震えながら起き上がって、そっちの方を見たよ。


―顔中に、砕けたガラスの破片が突き刺さっている妻の姿が、そこにはあった。


それからのことはよく憶えていない。


必死に駆け寄って、無茶苦茶にガラスを引き抜こうとして、それに対して、妻が獣みたいな声を上げながら、ものすごく抵抗したってことぐらいだ。

ふと気が付いたら、近くの小学校の廊下に、壁にもたれるようにして座っていた。

他にも、空襲から逃れてやってきた人々が集まっていた。


地獄だったよ。


これ以上適切な表現はないし、これ以上細やかな描写もしたくない。とにかく臭かった。

ふと、目の前に何か大きなものが転がっていることに気が付いた。

妻だとわかるのには、大分時間がかかった。

顔中、包帯でぐるぐる巻きになっていたからね。

胴体と右腕と右足も、同じような感じだった。

局部を隠す程度に残っていた着物の柄から、妻だとわかった。


最初は芋虫かと思ったよ。


真っ白な、変な形をした、臭い芋虫。


でもそれが妻だと分かると、頭から血が引いていくのが分かった。

耐え切れずに、胃の中のものをぶちまけた。胃液しか出なかったけどね。

それから、自分の体を見た。

手はガラスの破片を触ったためにズタズタ、妻を担いだために、着物は血糊塗れ、裸足でここまで駆けてきたから、足の裏は擦り剥け、ひどい切り傷がいくつもあった。

でも、大した怪我は無かった。

もう一度、妻を見る。

包帯の間からは、蛆が湧き始めていた。

それを見ていると、無性に腹が立った。ひっぱたくようにしてそいつらを払った。

そうしているうちに、ふと妻の左腕が目に入った。


びっくりするほど綺麗だったよ。


元々色白の方だったけど、右側の惨状と比べると、その美しさがより一層際立つようだった。

僕は、その手を握ったよ。

それで、何度も妻の名を呼んだ。

別に妻を勇気付けようとか、そんな殊勝なことを思ったわけじゃない。


ただひたすらに怖かった。


なにかに縋りたかった。


すると、ひゅーっ、ひゅーっ、って苦しそうな呼吸音に混ざって、妻が僕の名を呼ぶ声が聞こえたんだ。


小さな声だった。


本当に小さな声だったんだ。


でも、その声は、僕がなによりも求めていたものだった。


僕は左手を握り締めながら、何度も何度も妻の名を叫んだよ。

体裁もへったくれもなく、馬鹿みたいに泣きながら叫んだよ。

そのたびに、僕の名を呼ぶ声が返ってくる。

聞き分けの無い子どもを諭すような、やさしい声だった。

でも、その声はだんだん小さくなっていった。

それでも僕は叫び続けた。


そして、気が付けば、妻は―」



 
大空襲の直後、仙道さんは、軍に勤め始めた。

その後、エンジンに留まらず、元来の才能を遺憾なく発揮し、ありとあらゆる兵器を開発していった。

出世は早かった。

いつの間にか、軍内では一目置かれる存在となった。


―より正確に言えば、あまりの仕事熱心さから、仲間たちに敬遠されていた。


地位が高まるにつれ、仙道さんの発案が取り上げられることが多くなり、そうして生み出された兵器は、より合理的に、より的確に、人を殺していった。


―そしていつの間にか終戦となり、気が付いたら、裁判所にいた。

うやむやのうちに判決が下り、しばらく戦犯収容所に放り込まれた後、よくわからないままに釈放された。

占領軍の方針が変わったらしい。   

牢の外に出てきた仙道さんは、ありとあらゆる人々から「人殺し」と後ろ指を指された。

もはや、整備士として、仙道さんに帰る場所は無かった。



それが、仙道洋一郎という男だった。


奥さんの名前は、教えてもらえなかった。

 
 


 

「epigenetics 2 」

・・・八回裏二対三ツーアウト一塁三塁にランナーの場面で四番斉藤を迎えます野木さんこの場面湘北のバッテリーはどう動くでしょうか。

レジ付近に置かれている、一昔前のトランジスタラジオからは、甲子園の実況が流れていた。

どうやら、甲子園には雨は降っていないらしい。

「甲子園、いつ復活したんだっけ?」

幸江さんは、二杯目のアイスティーに、小さなポットに入ったミルクを注ぎながら尋ねてきた。

「3年前」

「じゃあちょうど、一樹くんが高三の頃かぁ」

「わかってて聞いたでしょ」

銀のティースプーンでアイスティーをかき混ぜながら、困ったような笑みを浮かべた。

「先生の悪い癖ですよ。

なにか話し始めようとする時、それとはまるで関係ないようで、でもそのことを意識せずにはいられないことを聞いてくる」

「だめかな?」

「卑怯ですよ」

懐からタバコの箱を取り出し、吸ってもいいかと軽く振ってみせた。

「ごめんなさい。タバコの煙、室内ではあまり得意じゃないの。

外なら吸いながら話してもらっても平気なんだけど」

「気にしないでください」

俺は箱をしまった。

「吸うんだ?」

「接客業やってれば、そうなりますよ」

「何?やっぱりストレスゆえ?」

「なんだろ。半分おまじないみたいなもんかも」

「どういう?」

「今俺はリラックスしてるんだー、って自己暗示?」

「よくわかんないな」

「まぁ好きで吸ってるだけなんですけどね、結局は」

幸江さんは、ふぅん、と適当に相槌を打ちながら、ガムシロップを入れずにアイスミルクティーに軽く口をつけた。

グラスを持ち上げたとき、グラスの底に、ビアホールのシンボルマークである、白鳥のロゴが印刷されたコースターが引っ付いていた。

「口癖、変わってないね」

「口癖?」

「語尾に『結局』ってつけるとこ」

「口癖って言うほどですかね」

「口癖って言うほどだよ」

これは大きいしかし左に切れてファールです、と野球アナウンサー特有の抑揚のある声が聞こえた。

「三年前と同じ。変わってないね」

さあフルカウントやはりここは決め球のシュートでしょうかそれともまだ斉藤に対して使用していないストレートでしょうか。

「あなたは一体何しに来たんですか?」

おっと一塁へ牽制ランナーを気にします。

「一樹くんに会いに」

「違う」

さあピッチャー振りかぶって投げた。

「朝永のことだろ?」

「一樹くん」

俺は席を立とうとした。


「待って一樹くん」


穏やかに諭すような声。

それでいて、有無を言わさず俺を従わせる声。

舌打ちして、席に座りなおした。

幸江さんは、軽くため息をついた。

「ねぇ、あなたはゆき―」

思いなおしたのか、そこで言葉を切った後、

「―朝永くんにこだわりすぎだと思うの」と言い直した。

「そんなことないですよ」

「そうね、こだわってるっていうのは語弊があったかも。敏感になりすぎてる」

「そうですかね」

「ともかく」と、幸江さんは表情を幾分和らげながら、表面に水滴のついたグラスを両手で包んだ。

「今日の私は、ただ懐かしさから一樹くんに会いにきただけ。他意はないよ。

ちょっと意地悪言いすぎたかもしれないけど」

しばらくお互い黙り込む。


俺は、まだこだわっているのか?


―まだ、許せないでいるのか?


「八重樫先生」

右中間に鋭い当たりこれは長打長打です三塁ランナー今ホームイン一塁ランナーは三塁に残塁いや蹴りました三塁を蹴りましたさぁきわどいところです。

「この試合、どちらが勝つと思います?」

「このラジオの?」

きわどいきわどいさあどうだセーフセーフです住吉商業逆転逆転四対三住吉逆転です。

窓の外はいつのまにか霧雨になっていて、黒々と青い真夏の空が、雲の切れ目から見え始めていた。

「わからないものですよ、野球って。

流れが見えていればいるほど」



「んで、結局どっちが勝ったの?」

ピッチングマシーンから放たれた、時速130キロのストレートをピッチャー返しにした時、仁科がそう尋ねてきた。

「お前、なんか質問するとこ間違えてねぇ?」

「いいじゃん、気になるもん」

また球がくる。

今度は、右に引っ張ってみる。

三塁強襲ヒット。

「住吉がリードを守って四対三で勝ち」

「つまんねぇの」

「でもなかったぞ」

「つーと?」

あと三球。

今度は左に流してみる。

一塁の頭上を越え、ファールかフェアか、きわどいあたり。いや、フェアだな、うん。

「湘北が粘ってなー。

ツーアウトから、八、九番が踏ん張って、一、二塁ってなって。

ほんでその日、二安打打ってた一番のご登場」

大きなセンターフライを打ったつもりで、ネットの上のほうに球を飛ばしてみた。

やはり、思い切り球をかっ飛ばすのは楽しい。

「ほー」

「でもそいつ、二、三塁間にいいあたり打ったらしいんだけど、そのライナーにショートが飛びついてアウト。

湘北、無念」

ラストは二、三塁間を抜けるタイムリーヒット。同点。いや、逆転。やったね。俺ヒーロー。

「ほれ、お前の番」

金属バットをバット立てに置き、ネットをくぐり、ベンチに寝そべっていた仁科の手から、マンガ本をひったくった。

「あ、待てよ、今エロいシーンだったんだよ」

「うるせぇ早く行け」

「なんだよイラついてんのかよ」

「けっこう真面目に話してたんだぞ、こっちは」

「俺だってけっこう真面目に聞いてやったんだぞ」

「嘘つけ」

「本当だって。朝永ってやつのことも、知らないわけじゃないんだぜ」

気が付いたら、仁科の胸倉を掴んでいた。

「おいなにすんだよ」

「適当なこと言ってんじゃねぇよ」

「落ち着けってお前」

気まずくなる。舌打ち混じりに、仁科を軽く突き飛ばす。

仁科はため息をつきながら、料金箱にコインを入れ、バッターボックスに入った。

「なん、そんなに朝永ってやつのこと嫌いなんか?」

「そういうんじゃねぇよ」

「じゃあなんなんだよ」

ぺきぃん、と大きな音をたてて、仁科は打球を、ネットの最上部につけられている「ホームラン」の小さな的に向けてかっとばした。

「野球部のころ、いざこざがあって、そん時きりの仲なんだよ。それまではバッテリーもくんでて、仲も悪くなかった」

親友だった、とまでは言えなかった。

「へー、野球やってたのは知ってたけど、バッテリー組んでたってことは、もしかしてチームのエース?」

「いや、俺はキャッチャーだったよ」

「ふーん、お前がねぇ」

ぺきぃん。強引に引っ張りすぎたせいで、的のはるか右側に打球は叩きつけられた。

「それよか、お前、朝永知ってるって?」

「確か、幸田さんと同じ大学だったよな?」

「ああ、律と同じだ」

ばすん。大振りしすぎで空振り。

体でけぇからパワーはあるけど、選球眼はないな。

「知り合いから聞いた話なんだけど、その大学、運動けっこう派手だろ?

ほんでその騒いでる連中の中で、二年の朝永ってやつが最近頭角を現してきてるらしい。

上の連中はそれが気に食わないらしくてさ、日に日に上層部と朝永のシンパの対立、まずい方向にいっちゃってるらしいよ」

「あいつ、確か有力な左翼政治家の息子だからな。

それがあるんだろ、二年で取り巻きまでできるってことは」

「それ初耳。ってことは、親父さんも一枚噛んでる、かも?」

「さぁ?興味ねー」

ぺきぃん。

ライトフライ。または大ファール。

ほんと力だけだな、こいつ。釣り球何球か放れば、簡単に三振にできるな。

「やぁ、どう、調子は」

ひょろりとした体格の、無精ひげを生やした眼鏡の中年男性が、こっちに近づいてきた。

「仙道さん、ちっす」と仁科が頭を下げた。

「こんちわっす」俺もベンチから立って挨拶した。

「調子いいみたいだね、うん」

「どうすか、新しいマシン、なんかできましたか?」と、俺は尋ねてみた。

仙道さんはここのバッティングセンターの主であり、同時に、バッティングマシーンの開発に余念がないエンジニアでもある。

いや、マッドサイエンティストである。

この人の、俺を空振りさせるという野望の達成に対する執念には、時々うんざりさせられる。

「いいこと聞いてくれたね。それがねぇ、できたんだよ」と、仙道さんは、欠けた八重歯を剥き出しにしながら破顔した。

「ホントですか」

「ホントホント。今回はね、けっこう自信作。

尾上くんも、そうそう簡単には打てないんじゃないかな」

「どんなんですか?」

「それはバッターボックス入ってからのお楽しみ」

不敵そうに唇をにっと吊り上げながら、こっちこっちとバッティングセンターの一番右端へと俺たちを誘った。

そこの防護網には、「このマシンは使用できません」と書かれたプレートがぶらさがっていた。

仙道さんはその中へと入っていき、小走りでマシンに近づき、なにかごそごそとマシンをいじり始めた。

俺はバッターボックスに入り、適当に素振りをして待っていた。

しばらくすると、がこん、とマシンがボールを取り込む音がした。

と同時に、仙道さんがダッシュでこちらに戻ってきて、安全な防護網の後ろから、俺の姿を食い入るように見つめてきた。

マシンが十分にボールを取り込み、投球アームが動く。

球が放たれ、こちらに飛んでくる。

そのタイミングに合わせ、バットを鋭く振りぬく。

―打った。

そう思った。

だが、ばすん、とボールが厚いゴム壁に当たる音がした。

―空振り。

一瞬、わけがわからなかった。

後ろを見ると、仙道さんがニタニタとさも嬉しそうにほくそえんでいた。

「ストライクだよ、尾上君。打てなきゃ、三振だよ?」

声が笑ってるぞ、仙道さん。

むかつくぞ、仙道さん。

二球目はちゃんと見よう。アームの動きを凝視する。

ボールが放たれる。

動きはちゃんと見えている。

―いける。

そう思い、思い切り振りぬく。

だが、ミートの直前、ボールがインコースへと、大きくスライドした。

ばすん。

またボールがゴム壁を叩く音。

「シンカーか・・・」

「それも、150キロ級の、高速シンカーだよ。

こんな球投げられる高校生っていなかったでしょ?」

ベースをコン、とバットで叩く。

追い詰められた時、逃せないチャンスの時、とにかく打ちたいと強く願った時、なぜかやってしまう、おまじない代わりの俺の癖だ。

「一人、知ってますよ」

「へー?すごいね」

仙道さんは、どこか不満げだった。

人間を遙かに凌駕する性能を持つバッティングマシンの開発が夢だと常日頃語っているマッドなエンジニアとしては、面白くない話なんだろう。

「だから、打てます」

アームが動く。

バットを絞るように強く握り締める。

肩の力は抜き、骨盤に乗せる感覚で腰を落とし、足の裏に力を入れる。

ボールが放たれ迫ってくる。

ボールの軌道を見極め、脇を締め、腰を大きくねじる。


完璧なミート。

軟球がひしゃげる感覚。


きぃん。


マシンにライナーが直撃する。

ピッチャー強襲。お粗末さまでござんす。

「うわっ、尾上君、なんてことすんの!」

仙道さんは悲鳴に近い叫びをあげながら、マシンへと駆け寄っていった。

「すいませーん」俺は仙道さんに向かって大声で謝った。

「くそっ、次こそは三振だ」と、仙道さんはマシンをせっせかといじくりながら叫んだ。

―もし今のが朝永の球だとしても、俺は打ち返すことが出来たのだろうか?

バットを勢いよく振る。

馬鹿な考えだ、と思った。

またバットを振る。

「うわー、こえぇ音。

お前、ホントなんで野球やめちゃったんだよ。

別に高校の野球部じゃなくったって、他にいくらでも活躍できるとこあったろうに」

「飽きたんだよ」

「もったいねーなぁ」

飽きた。

そう、それだけだ。朝永は関係ない。

朝永は、何の関係もない。

さっきのマシンの球より早く、より鋭いシンカーをイメージしながら、またバットを振った。

saosin

in search of solid ground


セイオシンのニューアルバム、「IN SEARCH OF SOLID GROUND」買っちゃいましたよ~w


最近、ポスト・ハードコアやらスクリーモやらに興味を持ち始めたどMの犬です。


もとはといえば、ニコニコ動画でボーカロイドのオリジナル曲を上げていらっしゃる、ゆよゆっぺさんに影響されて聞き始めたんですよね~。










(↑これもオススメなので貼っちゃう)





初めて聞いたとき、


「やべぇ!これまじやべぇ!!!」


って口走ってしまったのは仕方のないことでしたとさ。



ほんで、今まで聞いてきた音楽とはなんだか毛並みが違うので、色々調べていたらスクリーモやらなんやらでてきて、ほんでセイオシンに行き当たりましたよ、と。


これがまたどつぼ。


ファーストアルバムも欲しいんだけど、置いてないのよね~・・・




この日記を見てくださったごく少数の方の中に「スクリーモならこれ聞けばいいんだぜっ」って言いたくなるようなバンド、知っていらっしゃる方いたら、是非教えてください!


スクリーモに限らず、オルタナティヴ・ロック全般で、オススメあったら教えてください~w







「epigenetics(仮タイトル)」 1

195×年。

長く続いた戦争が終わった。

その年についての記憶らしい記憶は、ただ一つ。

女性の唇。その柔らかな感触。

12歳。

なにもかも夢中にぼやけてしまいそうな、蒸し暑い、ありふれた夏の日だった。




196×年。

俺は二十歳になった。

高校卒業と同時に、当たり前のように徴兵検査を受け、当然のように陸軍の部隊に配属され、二年間なんとなく訓練をこなし、そして特に何事もなく故郷の町に帰ってきた。

かといって、特にやりたいこともなく、父のつてを頼りにありついた、ビアホールの住み込みウェイターのバイトで食いつなぎ、半年が経った。

進学してはどうか、という話もある。

昔、父に世話になったという、俺の雇い主でもある、マスターの靖さんが後見人になってくれるという。

だけど俺には、特に勉強したいという意欲はなく、その話を靖さんに持ち出されるたび、考えときます、などと場当たりな言葉をのたくっては逃げていた。

仕事がある日は、朝早く目覚め(兵役時代に叩き込まれた早起きの癖だ)、朝のニュース番組を眺めながら朝飯を食べ、タバコをふかし、開店の準備をし、ランチタイムのクソ忙しい時間帯をしのぎ、昼飯を食べ、タバコをふかし、なんとなく手持ち無沙汰な午後を過ごし、晩飯を食べ、タバコをふかし、仕事帰りのサラリーマンたちのためあくせくと立ち働き、閉店時間を過ぎてもだらだらと居残っている数人の客を尻目に店の片づけをし、タバコをふかし、くだらないテレビを見て時間を潰し、一章ほど本を読んで床に就く。

休日も、さして彩り豊か、というわけではない。

やはり朝早く目覚め、朝飯までの時間を二度寝で潰す。朝飯を食べた後は、また寝るか、さもなければ、バッティングセンターでだらだらするか、海沿いをぶらぶらするかで時間を潰し、晩飯食って寝るだけ。

時々、仁科や律が遊びに来ることもある。

仁科とは兵役時代に知り合った。兵役時代の友人らしい友人といえば、仁科くらいだった。

仁科は退役後、隣町の大学に進学して、電気工学を学んでいる。

ただ、別にこれといった夢やら目標やらを持って入学したわけではなく、軍から支給される奨学金目当てという、あまり褒められたもんじゃない理由からだった。

卒業後は、半強制的に軍需関連の職業に就かされることになるらしい。

仁科は電話で断りもいれずに、気まぐれにやってくる。

「ビール飲みたくなったんだよ。別、いいじゃん」と言って、店員の知り合いであることをいいことに、安く振舞ってもらえる酒をガバガバ飲んで、仕事中の俺をいちいち捕まえてはくだらないことをだべり、閉店後は俺の部屋に上がりこんで、ベロンベロンになってひっくりかえって大いびきをかくまで、俺相手にひたすら飲みまくりしゃべりまくる。

翌日には、殴りたくなるくらい爽やかな笑顔で去っていく。

そういうやつだった。

律とは高校時代からの腐れ縁で、彼女かと問われれば、そうと言えなくもない関係だった。

律は、いまだ女子には門戸の狭い、難関の国立大に合格し、町では才女として、ちょっとした有名人である。

容姿のほうは、髪形がおかっぱに近いショートであるせいか、全体的な印象にやや幼さが残るものの、ぽってりと柔らかそうな唇、通った鼻筋、ぱっちりとした二重瞼。本人は、少し団子っ鼻であることを気にしているが、十分可愛い方に入るだろう。

国立大には電車で通っており、そのための定期がきく範囲内に、俺が住んでいるビアホールがあるため、会うための交通手段には不自由しない。

そのためか、暇を見つけてはちょくちょくやってくる。

しかし、楽しくいちゃいちゃしながら時間を過ごせるならいいのだが、真に遺憾ながら、律は俺の部屋に上がりこんでは、「汚い。臭い。最低。掃除するから出ていって」と俺をゴミ扱いする。

いつもこんな調子だから、時々、「お前、俺の嫁にならねぇ?」と茶化すと、「馬鹿言ってないでそこどいて」と返される。

ただ、根が素直な性格なので、頬に少し赤みが差す。

そういう時、やっぱこいつ可愛いやつだ、と改めて思う。

こんな風にして、俺の日常は半年間、無為に過ぎていった。

お決まりのコースに飛んでくるボールを、ただひたすらあてずっぽうに打ち返す。

そんな毎日だった。



その日は、朝からずっと雨が続いていた。

雨の日は客の入りが悪く、ランチタイムが過ぎた今、暇を持て余した数人の常連の爺婆が、靖さん相手に、セピア色にくすんだ昔話に、萎れた花を咲かせるのが常だった。

俺は外階段の踊り場に設置されている、気の毒なくらいささやかな喫煙所で、タバコを吸っていた。

雨は間断なく降り続け、眼下のトタン屋根を、カンカンと音高く打ち続けていた。

半年前、この踊り場から見えた風景は、右半分が綺麗に吹き飛ばされた家だった。残った左半分から察するに、わりと洒落た、昔風の洋館だったらしい。

厨房の仕事がひと段落付いて、この喫煙所で一服つけていた志津絵さんに、その家について聞かされたことがある。

「あそこの家にはね、一組の若い夫婦が住んでいたんだよ。

もともとは退役軍人の老夫婦の家だったけど、田舎に引っ越すことになって、それで知り合いだったその夫婦に、安く家を譲ったらしい。

大陸での兵役を終えたばかりの靖さんとここに店を構えて、ようやく経営が落ち着いてきた頃、その夫婦はやってきた。

二人してうちに挨拶に来たときのことは、今でもよく憶えてるよ。

夫は、体の線が少し細いけど、顔が凛々しく引き締まった将校。

妻は、西洋人みたいにすらりと背が高くて、長くて豊かな黒髪を持ち、そして女の私がどきっとしてしまうくらい、美しい顔立ちをしていた。

似合いの夫婦ってのは、こういうことなんだろな、ってつくづく思ったよ。

だけどそれからほどなくして、都市にある軍司令部を標的とした大空襲がおきた。

そのとばっちりをうけて、この町にも少なくない数の爆弾が落とされた。

そのうちの一つが、あの家のそばに落ちた。

その結果、家の右半分があんなふうに吹き飛ばされちまった。

幸い、その家からは死体は出てこなかった。

だけど、それ以来、そこに住んでいたはずの夫婦の消息は途切れてしまった。

元々近所付き合いのない夫婦だったけど、引っ越したならその噂くらいは聞くようなもんじゃない。

けど、それも一切なし。

旦那の仕事の都合で、こっそりこの家を去ったんじゃないか、ってのが一応の結論だけどさ」

志津絵さんはそこで言葉をきり、短くなったタバコを大きく吸い込み、煙をゆっくりと吐き出した。

「不思議な夫婦だったよ。

うちに引越しの挨拶にきた時、ちょっと言葉を交わしただけなのに、なぜか二人が深く愛し合っているってことがとてもよくわかった。

そして、その事実だけを私の中に残して、どこかへいっちまった」

志津絵さんは、タバコを灰皿でもみ消した。

「ほんと、不思議な夫婦だったよ」



だが、半年の間に、その家は重機に押し潰されてしまい、跡地には、「私有地につき立ち入り禁止」と赤く書き殴られた看板が掲げられた。

軽くため息をついた。

「なに一人たそがれてんの?」

後ろから声がしたので振り向くと、従業員の住み込み部屋へと続く4階のドアを背に、紗智子ちゃんが立っていた。

「学校は?」俺はそう尋ねた。

「明日終戦記念日だから、授業は午前までだって」

「そっか」

「店の方はどう?」

俺は軽く肩をすくめてみせた。

「でしょうね」と、紗智子ちゃんは軽くため息をついた。

雨はしとしとと陰湿に降り続いていた。

「朝からずっとこんなんじゃあねぇ」

紗智子ちゃんは、階段を一段一段、その強度を確かめるようにゆっくりと下りてきて、ベンチに座っている俺の隣に腰掛けた。

紗智子ちゃんは、顔をぐっと俺のほうに近づけると、「ねぇ、なに考えてたの?」と言って、にっと笑った。

前歯が少し大きいけど、白くて綺麗な歯並びをしていた。

「別に何も」

「嘘」

「じゃあ混迷を極める大陸内戦の現況について」

「嘘」

「じゃないかもしれんぞ」

「嘘だよ」

「どうして」

「だって一樹さん、馬鹿だもん」

「調子乗んな」軽く小突いてやった。

おさげの髪からは、少女らしい健康な、どことなく甘ったるい匂いがした。

「いた―いひどーいさいてーあやまれー」

「断る」

「母さんに言いつけてやろ」

「ごめんなさい紗智子様」

きゃはは、とひとしきり黄色い声で笑うと、

「本当は何を考えてたの?」と、無邪気な、悪戯めいた笑顔で、聞いてきた。

「別に、なにも」

タバコの先に溜まった灰が、自らの重みに耐えかね、足元へと落ちた。



「おう一樹、戻ったか」

ホールに戻ると、靖さんからそう声を掛けられた。

カウンターに近い席に固まるように、お年寄りグループがいる以外は、窓際に、外回り中のサラリーマンらしき男が2人と、白いワンピース姿の女性がいるだけだった。

「どうします?ホール暇なら、厨房のほうの仕込み、手伝ってきましょうか?」

俺がそう聞くと、靖さんはいわくありげにほくそえんだ。

「そんな暇で暇でしょうがない一樹君に朗報だ」

「なんすか?」

「お前に女性の訪問者だ。それも、かなり美人の」

「え、どこすか?」

靖さんは、腕を組んだまま、窓際のワンピースの女性に向かって、顎をしゃくった。

「ここに尾上一樹という方は勤めていらっしゃいますか、って聞かれてね。お前の高校時代の教師だそうだ」

ふいに、心臓が違う脈を打った。

「特に用はないそうだが、お前の顔が見たくなったんだとよ。いいねぇ、見れた顔しているやつは」

―どうして今。

「仕事のことはいいから、ゆっくり話してこいよ、どうせ暇だしな」

―あなたがここに?

話し声が聞こえたのだろうか。その女性はこちらを振り向いた。

長い髪。少し汗ばんだ白い額。細く整った眉。やや切れ長の二重瞼。薄く茶色がかった瞳。左目の下に泣きぼくろ。

―柔らかな唇。


「一樹くん」


幸江さんは、そこにいた。

僕の初恋の人は、そこにいた。


なにもかも美しいまま、そこにいた。


耳朶にまとわりついていた、静かな雨音が止んだ。

今考え中の小説

一応、現段階で考えている小説のアイデアをば。



○1950年代まで戦争が続いちゃった日本。その1960年代くらいが舞台。


元から興味のあった、学生運動とか旧日本軍とか、その辺を題材に書いていこうかな、と。

「システムによる暴力」に興味があるんですよ。

でもノリは(全然読んでないけど)ラノベくらいの気持ちで。題材がお堅いので、文章まで硬くしちゃ、息が詰まる。つか飽きる。


この小説は、もう冒頭部分は書き終えて、これからどう展開させていこうかなー、って状況です。もっと資料集めなくちゃ。


近日、冒頭掲載しますね。




○上記の小説のサイドストーリー的なものを、短編で書こうかなと考え中。


登場(予定)人物の中に、陸軍中野学校出の将校と、その妻がいるんだけど、その人たちのお話。

間違いなくバッドエンド。悲恋だもん。

ぶっちゃけ、書きたくねぇなぁ・・・バッドエンド、書いてて気が重くなるもん・・・

でもいやよいやよとか言ってるうちに、興味が湧いてきて書きたくなっちゃうのが、書き手の普遍的な性分。仕方ないね。

これも資料集めが優先事項かなぁ。まだまだ旧日本軍への理解が足りん。



○エロゲからヒロインが飛び出て、いろいろとどうしよう、な小説。あえてエロ抜きで書いてみたい。でもちょっとはエロねじ込みたい。直接的じゃなきゃいいよねうんいいや


ただ、内容はヒロインとの相対的な関係に重きを置くような恋愛小説ではなくて、「PCから女の子が飛び出した」という、特殊な状況下に置かれたごく普通の男の子が、その後どういうふうに行動していくか。その行動により、周囲はどのような反応を示すか。そこに比重を置こうかな、と。


まだぼんやりと構造が浮かんだ程度で、どうしようか考え中。









あとはいろいろぽやぽや浮かんだり消えたりするアイデア多数。


とりあえずは、さっき言った冒頭部分の公開かなー。


あとは、手慰みに短編やショートショートをちょこちょこあげていくって感じで。


まーたらたらマイペースにやっていきますよ~w











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